講座読売日本交響楽団 練習所見学+オーケストラのリハーサル付き【おでかけ】
2024年1月13(土)10:30~13:00
黒川駅改札を出ると「この黒川駅前で、オーケストラが育っています。」のポスターが。駅前広場に出ると目の前に瀟洒な白い建物。その壁には大きな五線譜が描かれている。しかし音符はなし。ここから音楽を始めようという意味が込められていると、今日私たちを案内してくれる制作課長の法木さんから伺った。
今日は『おでかけ 読売日本交響楽団 練習所見学+オーケストラのリハーサル』である。10時30分の集合時刻にもかかわらず、15分には受講生の皆さんほとんど集まっている。期待の大きさがうかがえる。外集合だが暖かな日差しに包まれ、雨予報がはずれて一安心。
諸注意の後、演奏課長の深川さんも案内に加わってくださり、2班に分かれまずは施設内の見学をする。建物の中は壁も床も白く清潔である。以前はよみうりランド内に練習場があったが、耐震の関係で2019年にこちらへ移った。オーケストラ専用のリハーサル室としては国内で最新の設備を誇る。
読売日本交響楽団は、年間100回ほどコンサートを開催しそのリハーサルをここで行っている。演奏会リハーサルは一日で行う作品もあるが、二日から三日の場合もある。今回は16日に行われる定期演奏会のリハーサルで四日間行う。今日はその二日目。読売日本交響楽団の場合、一日のリハーサル時間は日中の実働三時間だが、集中しての練習はかなりきついとおっしゃっていた。
リハーサル開始時刻一時間以上も前であるにもかかわらず、十数名の方々が既に練習室で音出しをしていた。この練習室はサントリーホールをはじめとする各コンサートホールの舞台をもとに設計されており、天井までの高さは約12メートル。フル編成でもゆったりと演奏でき、また合唱付きの作品の場合は、合唱団も入室可能なほど広い。
建物内の施設の見学も驚きの連続であった。指揮者やソリストの控え室、演奏者の個人練習室、何人か集まっての中規模練習室、簡易録音スタジオなど、目的に応じた部屋がいくつもあった。事務室の隣には書庫があり、たくさんの楽譜が保管されていた。この中には1962年の創立当初の楽譜も保管されている。まさしく楽団の宝である。これらは演奏会の度に必要な楽譜を取り出しパート毎に配布し、演奏会終了後は再び集めて保管しておく。楽譜には指揮者からの指示など鉛筆での書き込みもあり、一つ一つ丁寧に修復して保管するという。
楽器の保管室も見学した。ピアノの保管室は湿度を高めに、打楽器や管楽器の保管室の温度管理、演奏会場への楽器搬出入口のトラック待機場所までも空調設備があり、楽器をとても大切に扱っていることがよく分かった。そしてトイレの多さ。これはたくさんの団員の方々が短い休憩時間を有効に使うためであるという。素晴らしい音楽を創り上げるための努力をあちらこちらにみることができた。
リハーサルは開始予定時刻ぴったりに始まる。緊張感が高まる。指揮者のセバスティアン・ヴァイグレさんは英語で、時に身振りで、時にいすから立ち上がり指示を出しながらリハーサルは進んでいった。笑顔で親指を立てて“Good!”の合図も交えながら。演奏者は楽譜に鉛筆で書き込んだり、消しゴムで消したり演奏方法を手直ししながらリハーサルは行われた。指揮者が演奏を止め指示を出し、再度演奏すると全く違った音になったのには感動した。
リハーサル後セバスティアン・ヴァイグレさんにお話を伺った。「指揮者は作曲者の書いた楽譜を忠実に表現するために、音量バランスをきちんと考え、楽譜に書かれた指示を整理しながら構築し演奏すること、それが指揮者の仕事」また「こうやって皆さんに指揮者の仕事を理解していただけてよかった。」とおっしゃっていた。最後に指揮者と受講生と一緒に記念写真を撮った。予定ではこれで本日の講座は終了だったが、楽団のご厚意で、リハーサル見学を1時間追加してくださり定期演奏会で演奏する「交響詩ツァラトゥストラはかく語りき」の一番有名な冒頭からのリハーサルを見学させていただいた。
今回演奏会に向けた練習風景の見学だけではなく、施設設備や音楽を創り上げていく過程を間近に拝見することで、芸術を守り、未来へつなげていく、積み上げていく努力を知ることができた。有意義な一日となった。
(文責 齋藤厚代)