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アート講座vol4 第3回 「ドキュメンタリー映画は何を伝えてきたか」 講師 日本映画大学学長/映画評論家佐藤忠男

投稿日:2012年11月23日

11月17日(土)に、日本映画大学学長/映画評論家 佐藤忠男先生お迎えして、日本映画大学大教室にてドキュメンタリー映画「熊笹の遺言(ハンセン病の記録)」上映後、ドキュメンタリーについてのお話を伺いました。アート講座でドキュメンタリー映画を取り上げるのは初めてなので、多数の受講生が熱心に聞き入っていました。受講生からの投稿文をご紹介します。
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本日はアルテリッカの重鎮佐藤忠男日本映画大学学長の登場である。映画に対する鋭い目線を判り易く解説して下さる毎回人気の先生だ。
冒頭佐藤先生の挨拶のあと本日の主題である「ドキュメンタリー映画は何を伝えてきたか」の例として「熊笹の遺言(ハンセン病の記録)」という1時間余りの映画の観賞である。なかなか重たいテーマを扱った2002年の大学の卒業制作作品だそうだ。正直言って最初はまともに画面を見ることが出来なかった。3人の元患者の外観を見るに堪えなかったのである。不思議なことに時がたつにつれ、3人の方の話や考え方、生き様に物凄くひかれる部分が出てきて最後には食い入るように画面を見ていた。つらい人生を送られただろうが、その人生を素直に受け入れ、しかしながら人間性や闘争心を失わず我々よりも前を向いている姿に感動した。またかって患者が強制的に収容された事は知っていたが、強制労働まで強いられていた事を初めて教えられた。最後は心温まるシーンで終わったが、とても考えさせられるドキュメンタリーであった。
後半は佐藤先生の講演である。今観賞した映画の解説から始まった。この種のドキュメンタリー映画の制作の難しさ、知られたくない撮られたくないといった微妙な問題や事実を事実として撮ることの難しさ、等を説明された。しかし患者本人も周囲も嫌がるハンセン氏病について差別を直接経験された方を中心に映画という記録に残しておく意味は大きいし、正しい見方をもってそれを観る人に先入観として与えられればドキュメンタリー映画の使命を果たせることになると説かれた。とても良い題材を扱った映画であったし、ハンセン氏病について個々の患者にインタビューしたのはこの作品だけだろうと高い評価をされた。
ドキュメンタリー映画の歴史についても触れられ ロバートフラハティの「ナノック北」という作品がドキュメンタリー映画として最初の作品でありその映画の面白さを解説され、次に日本を代表する亀井文夫の「上海」「戦ふ兵隊」という作品を通じて主として「ヤラセ」の可否に関して大変興味深い内容の話をしていただいた。ドキュメンタリーという内容でありながらヤラセを通じて反戦を論じた作品であったとか、勇ましい兵隊というより疲れた兵隊をうまく表現していたとかである。
さらに羽仁進の「教室の子供たち」はヤラセの全くないドキュメンタリーであったとか、岩波映画の「ひとりの母の記録」は全く別々の家族からピックアップして新たな家族構成を作り作品としたもので果たしてドキュメンタリーと言えるのかといった論争あったとか映画裏面史を楽しく聴かせてくださった。
私自身ヤラセという言葉はドキュメンタリーの敵という感覚を持っていたが、ヤラセをうまく活用して真実を表現するということの難しさや効用も理解でき大変有益であった。計2時間半の時間が短く感じられる充実した講座で、佐藤先生の熱意ある講義に深く感謝申し上げます。先生これからもますますご活躍下さい。(文 アメリカン、写真提供 ERさん)
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