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選択講義 佐藤忠男が語る 映画の魅力

投稿日:2018年3月23日

アート講座恒例の「特別講演」は、映画評論家、日本映画大名誉学長、佐藤忠男先生のお話しです。佐藤先生には、川崎・しんゆり芸術祭実行委員会委員長として、地元しんゆりの芸術振興にご尽力いただいています。
さて、今回も前半は映画観賞です。観賞といっても、後半の講演に向けての問題提起なのですが、演目は小津安二郎監督作品「彼岸花」です。観賞に先立ち、小津作品には独特のスタイルがあると前置きされたあと、「この映画には小津監督独特の構図の工夫があるが、それは何かを考えながら観よう」という課題が出されました。
モノクロが多い小津作品ですが「彼岸花」は1950年代のカラー作品で、さすがに色彩感、科白の言い回しなどに時代を感じさせますが、観ているうちに味わいが出て、引き込まれてしまいました。やはり家でDVDなどを観ているのとは違い、監督の息遣いが今でも感じるような気がしました。
作品観賞の後は講演の本題です。佐藤先生から提起された課題の「画面の構図」について、会場から沢山の感想が語られました。小津作品と言えばカメラを下から眺めるローポジションからのアングルが有名ですが、その他にも、画面をあまり動かさない、幾何学的に縦横の枠組みを必ず映し込む、など構図に工夫を感じます。佐藤先生は、人物の配置や俳優の動きを精密に計算しつくし、複数人でも同じ角度で座らせたりして、畳の上で動かない日本人の生活を表現しながら、独特の一体感を醸だしている事を挙げられました。ここに小津監督のテーマが表現され、それはまさしく「和」であり「和やかに人と付き合う事」ということに尽きると、結ばれました。
私たちは映画を鑑賞する時は表面的な興に任せてしまいがちですが、今回の講演のように観賞前に課題を出され、その課題を意識しながら鑑賞すると、より深く監督の言わんとすることを感じることを学びました。
今回は特別講演として3時間半に渡る長時間でしたが、参加者はみな納得の表情で口々に感想を語りながら会場を出て、薄暗くなった新百合ヶ丘駅前に向かいました。(記録文 とおる  写真 E-river)